1級椅子張り技能士 資格と収入のビミョーな関係特集-MSN転職・アルバイト-
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資格は知識や技術を証明するもの。それを究め続ける人々はどんな仕事をしてるのか。
希少価値の高い資格を持ち、職人とも呼べる技を持つ人の仕事や横顔を紹介する。
その仕事はまさにプロフェッショナルだ。
260年前の技法を今に伝える仕事がある。17世紀ヨーロッパのロココの技法と呼ばれる技術を今も脈々と守り続け、その技術を磨き続けている。馬の毛やヤシの繊維などの天然素材のみを使い、すべて手仕事で作られたその椅子は、50年に1度張り替えるだけで200年300年と使い続けることができる。その技術は非常に特殊で、タンスやテーブルなどの家具を作るのとは、全く異なるのだ。
現代では、椅子を置いていない家庭はないというくらい、当たり前の生活用品となったが、この椅子張り技能士という資格や仕事は、あまりにも知られていない。大量生産で作る椅子とは一味違う、職人の手で一つ一つ作り出される椅子を、今なお守り続ける上柳氏に話を聞いた。
―椅子張り技能士の現状についてお聞かせください。
現在の職人はどんどん高齢になり、引退していく人が多い。若手の育成を急ぐ必要がありますが、機械で作られる大量生産品に押され、手仕事を引き継いでくれる人が少ないのが現実ですね。
―お仕事の内容は?
現在はリフォームが7割、新品の製作が3割という具合です。10年から20年以上前の椅子には、まだどこかしらに職人の仕事が残されており、古ければ古いほど完ぺきに修理して差し上げられます。
―道具で作る椅子はどこが大きく違いますか?
やはりいかに長く使えるか。使い込むほどに体になじんでいくか、という点です。古典技法を守り、天然素材で作られた椅子はその後、何百年という時間を刻むことができます。そして持ち主にあった掛け心地になっていく。私は作る人と使う人の共同作業で何年もかけて一つの椅子を作り上げていくものだと考えています。
―今までで最も印象的なお仕事は?
ある画家さんから椅子の製作を依頼されました。その方は以前に肺結核を患っており、肋骨(ろっこつ)を取ってしまっていた。その影響で長く腰掛けていることができなかったんです。当時80歳を超える高齢でしたが「最後に1枚絵を描きたい。30分だけ座っていられるだけでいい」と、私を訪ねてきたのです。さっそく試作品を持っていったのですが、なかなかわがままな方で、あーでもない、こーでもないとおっしゃるんです。しかし気が付けば座ったまま1時間半。3倍もの時間座っていることができた。納得いただいてお譲りすることができましたよ。
―今でも身に付けられない技術がありますか?
ルーブル美術館で修復士の仕事をしている職人たちがいます。彼らは歴史ある椅子を修理するときに、その個所の歴史の差を感じさせないように、汚しをかけるんです。私を含め、日本の職人は新品のようにきれいに仕上げることは得意としますが、こういった技術は私もまだまだ勉強中ですね。
職人歴54年、71歳を迎える高齢にもかかわらず、いまだ現役の職人としてその技術を磨き続ける上柳氏。この取材の直前にもドイツで技術交換を行ってきたという。職人の手による本物の技術を守り続けることの価値を教えてもらった。伝統の技能を引き継ぐというキャリアも、大きな意味があるのではなかろうか。




