ここまで本コラムをお読みいただいたみなさんにはおわかりいただけたと思うのですが、僕が考える良いキャリアの根幹にあるのは自分自身のマインドセット。つまり心の持ちよであると考えています。
ここで改めて、自分にとって何が良いキャリアで何が悪いキャリアなのかについて考えてみましょう。これは絶対に人が決めてくれるものではないですから、自分の心にしっかり問いかけてみるしかありません。ちなみに僕は、ふと今までを振り返ったときに「ああ、良いキャリアを歩んできたな」と感じるとか、さらに突き詰めれば死ぬ直前に「良いキャリアだったな」と感じられることが良いキャリアなのだと思っています。
そして良いキャリアを実現するために大切なことは、常に自分自身が納得いく喜びの源泉をもっておくことです。もちろんそれは人によって千差万別ですが、ひとつ言えることは「自分の欲望を満たすこと」に喜びの源泉を置いてしまうと、そのキャリアはいつか辛くなってくるということ。人間の欲望とは際限なく広がっていきますから、完全に満たされることはありません。仮にある時点で満たされたとしても「もっともっと症候群」になって、「もっとお金が欲しい」「次は名誉が欲しい」さらには「世の中を支配したい」と、どんどんエスカレートしていってしまうのではないでしょうか。そして僕はこの自分の欲望を満たすための「Will」を、「自己中心的なWill」と呼んでいます。
では、何を喜びの源泉にするのがいいのか。それは「社会に開かれたWill」を見つけておくこと。これをわかりやすく説明すると「自分がどれだけ人の役に立っているか」を考え、その実現のための行動をし続けること。だからまずは「自分が何をやると周りの人が喜ぶかな?」って考えてみる。そして、その実現こそ自分の喜びの源泉であるというマインドセットをもち続けることが、良いキャリアを積み重ねていくためのカギだと思います。
あなたには「社会に開かれたWill」を実現するために天から授けられた能力があります。それがあなただけの「Gift=贈り物」です。僕はどんな人であっても絶対に他人よりも秀でた何かがあると思っています。意外と自分では気がつかなかったり、気づいていても封印したくなるようなものだったりもしますが、必ずあるはずです。ただし、この「Gift」は天から与えられたものですから、自分だけのためだけに使うべきではない。後天的に得た能力(aquired skill=アクワイアード・スキル)は「自己中心的なWill」のために使ってもいいと思うのですが、「Gift」は「社会に開かれたWill」を実現するために使うべきものだと思います。
「社会に開かれたWill」を「天職」という言葉に置き換えるとさらにわかりやすいかもしれませんね。例えば、「私は人類が今後も繁栄していくために、次の子孫をしっかりと育て上げたい。そうすることできっと人の役に立てる」と考えている人がいたとしましょう。そして、その人は子どもを育てるためのすばらしい自分の「Gift」に気づいたとします。実はその人にとっての天職とは、仕事でお金を稼ぐことではなく、家庭の主婦(主夫)としての仕事をまっとうすることかもしれません。確かにその人の「Will」は2人とか3人の子どもたちのために向けられるものかもしれないですが、世界平和を唱えて10億人を救った人や、売り上げ100億円の企業をつくった人の「Will」と比べてどちらが上とは絶対に言えない。それは全く同じ価値だと思います。
キャリアとはお金を稼ぐ仕事に限った話ではなく、人生全体の諸活動を言います。お金や名誉のためではなく、自分に与えられた「Gift」を見つけてきちんと活用することで、世の中に役立っている自分をつくる。極論と言われるかもしれませんが、僕は、これこそが最高に幸せなキャリアの実現なのだと信じているのです。みなさんが、自分だけに贈られた能力である「Gift」と出逢えることを、そして「社会に開かれたWill」の実現に踏み出せることを、僕は心から祈っています。
さて、来週はついに最終回です。ラストメッセージと共に、ここまでにお伝えしてきた「幸せなキャリア」を構築する方法を体系化してお別れしたいと思います。ぜひご覧ください!

