今週は職場の良好な人間関係をつくるために不可欠となる、リーダーシップについて解説していきます。僕が考えるリーダーシップの定義とは「他人に影響力を及ぼして、望ましい行動を起こさせる」こと。私という主体を想定して説明すると、私というリーダー自身が、いろいろな手段を使いながら、周囲に影響を与えて、私自身が望むような成果を実現するというわけです。そういった意味で、部下を引っ張っていくときだけに限らず、同僚や上司に対して発揮するべきリーダーシップもあります。職場の人間関係を円滑にし、チームでいい仕事をしていくには、いわゆるリーダー的ポジションにある人だけでなく、そこで働く全員に多様なリーダーシップが必要とされるのです。とりわけ新しい職場のニューカマーに必要とされるのは、同僚に対するリーダーシップでしょう。
例えばですが、同僚に「飲みに行こうよ」と声をかけて、「いいね!」という返事を引き出すことができれば、それはすでに同僚に対してリーダーシップを発揮しているといえるのです。特に前回解説した、新しい職場に順応するための「守・破・離」(第29回参照)でいうところの、「守」から「破」の段階では、この「巻き込み行動」ともいえるリーダーシップが、自分の職場でのポジションを確立するためにとても大切な要素となります。
さて、僕はリーダーシップには大きく4つの源泉があると考えています。まずはそれぞれを説明していきましょう。
(1)組織から与えられた正当性
課長、部長など、いわゆる組織から与えられた、ある職級に就いた人が持つ権限と考えてください。極端な話ですが「言う事を聞かなければマイナス評価をするぞ」という力の存在がリーダーシップを担保しているのです。
(2)専門性
周囲から、「あの人は当該分野の専門家である」「だからあの人の話を聞くことは得である」と思わせる専門性。例えば、誰でもお医者さんから「お酒を控えたほうがいいですよ」と指摘されたら、控えなければいけないと素直に考えるでしょう。同じように、社内の営業の達人から「こうやったらすごく売れるぞ」とアドバイスされたら、きっと多くの人がそのアドバイスを実践してみようと思うのではないでしょうか。
(3)正義・大儀・合理
周囲に、「社会に貢献している」「筋が通っている」「あの人の考えには裏がない」と思わせる意志や行動。例えば、以前に放送されていたNHKの『プロジェクトX』で、メンバーがリーダーについて行こうと思うリーダーシップ源泉のほとんどがこれです。「富士山にレーダードームをつくるのだ! なぜなら伊豆にこれ以上台風による悲劇を繰り返さないために!」「よし! やりましょう!」といった具合です。
(4)人間的魅力
「なぜかわからないけど、この人についていきたい」と思わせる属人的かつ不思議な力。必ずこのような力を持ったリーダーが世の中には存在します。それが何かを説明するのはなかなか難しいのですが、逆のパターンは説明できます。「自分の過去を否定してしまう人」「私利私欲の強い人」。このような人には、誰もついていきたいと思いませんよね。
以上、4つのリーダーシップ源泉を説明しましたが、僕は(2)と(3)が新しい職場で発揮すべき大切なリーダーシップであると考えています。まずは、「守」の段階を経て、周囲の信頼感を獲得しておくという前提が必須ですが、「あの人は当該分野の専門家だ。しかも言動に裏がないし、正しい。新参者から言われるとしゃくだけど、ここはいったんあの人に従ってみるか」と思わせる。新天地で存在感を示していくためには、「専門性×正義」のリーダーシップが必要とされるのです。
日産でカルロス・ゴーン氏が発揮したリーダーシップ源泉も同じようなものであったと思います。彼はまず、「君たちはとても優秀である。やろうとしていたことも大部分は正しい」と受け入れました。「唯一もったいなかったのは、実行できなかったことだ。でも君たちが悪いのではなく、上が悪かったのだ。だから私がやらせます」。ここまでが同質化のプロセスです。次に差異化のプロセスへ。「でも、もう少しこうすべきでは? グローバル標準の中で勝つにはここが足りないのです」と。そうやって少しずつ差異化を提案しながら本当に成果を出しますから、「やっぱりゴーンさんはすごい」となる。彼はここまでのプロセスをわずか4年弱で完成させてしまいました。
新たな職場であっても、「守・破・離」のプロセスをしっかり踏んで、そして、良好な人間関係を醸成するリーダーシップを発揮できる人。それが本当に仕事を楽しむ達人です。新天地で幸せなキャリアを築くために、このことをしっかり心にとめておいてください。
来週は、仕事を楽しむ心を維持するために必要な、「自分流」の体調管理の方法について解説していきます。

