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“キャリア力”をつければ仕事はもっと楽しくなる!
「のだみ流・働(はた)(らく)論!」

第29回 新しい職場に順応するための「守・破・離」

  • 最初の3カ月は、自分を抑え同質化の期間とする。
  • 信頼関係ができたと感じたら、差異化の段階へ進む。
  • 「守・破・離」を繰り返すことでキャリアが充実する。

前回まで3週にわたって、「仕事を楽しむ達人」になるための心構えについて解説してきました。しかし、皆さんが働いている職場は「場」という字が使われていますね。当たり前ですが職場とは、複数の人が集い、協力し合いながら成果を実らせていく場所です。調査などを見ると、転職を考えるときの理由の上位には、常に人間関係の悪化がランキングされています。そういった意味で、心構えも大切ですが、自分以外の他者との関係を円滑にするテクニックを持っておいたほうが仕事は断然しやすくなると思います。特に新しい会社や職場に移って仕事を始める際には、この上手な人間関係の構築がとても重要な要素となるのです。

能楽を確立した世阿弥の教えに、「守・破・離(しゅ・は・り)」というものがあります。これは指導者から何かの技術を学び始めて、独り立ちしていくまでの段階を指す言葉です。「守」は教えを守る段階、「破」はその教えに自分なりの創意工夫を加えてみる段階、「離」は指導者から離れて自分のスタイルを確立していくことです。今回は、この「守・破・離」を使って新しい会社や職場にできるだけ早く順応し、幸せなキャリアを築いていくための方法を解説していきたいと思います。

○「守」
新しい職場で張り切って、これまで自分がしてきた仕事の進め方や前の部署や会社のやり方を主張する人っていますよね。長い時間をかけて今の職場で働いてきた人たちにとって、新参の転職者から「前の会社ではこうだった」「僕はこうやって仕事を進めてきた」など、異質な文化をいきなり押し付けられることほど嫌なことはありません。移ってきたからには、「ここぞ新天地」「住めば都」と信じて、まずは新しい職場文化に自分をなじませていくことが大切です。

これが「守」の段階。周囲の話をしっかり聞き、上司や先輩の行動を見習って、新しい職場に自分を同質化させていく期間と考えてください。最低でも最初の3カ月間は「守」の期間と決め、周囲との信頼関係を醸成することを最優先にするといいと思います。僕がシンクタンクでマネジメントしているときは年齢や能力がどうあれ、中途入社者の場合は数カ月間、新入社員と同じ仕事をさせていました。そこで「なんで俺がこんな仕事を?」という顔をする人は、やっぱりその後も力が発揮できないことが多かったように思います。アウトプットで存在感を示すのではなく、インプットで存在感を示すイメージです。

○「破」
新しい職場にも少しずつ慣れ、例えばですが、同僚や上司から「さん」付けではなく、名前やあだ名で気軽に呼ばれるくらいになったら、ある程度周囲との信頼関係が成り立ってきたと考えていいかもしれません。そろそろ次の段階へ移行するタイミングです。ミーティングや打ち合わせなどで、あなたの専門分野や得意な仕事、自分の意見をプレゼンテーションする機会を設けてみましょう。当然ですが、今の職場の雰囲気やルールを壊さぬようデリケートに行うこと。そうやって周囲に「なるほどな〜」「それ、試してみよう」と思わせるような差異化のポイントをアピールするのです。

同質化の殻を破って差異化を試みる。これが「破」の段階。そして「破」の状態を繰り返しながら、小さくてもいい、成果を挙げ続ける。そうやって「あの人の言っていることは正しい」「もっと教えてください」など、今度は逆に人に教える立場になれたなら、それは「破」の段階に到達したと言っていい。新しい職場で、あなたのリーダーシップはゆるぎないものになっているでしょう。

○「離」
僕がキャリアの世界で考える「離」とは、今の職場を巣立つタイミングだと思っています。まず「守」で同質化して、「破」で差異化して、その差異を職場にしっかり根付かせ、次なる新天地に旅立っていく。社内の新しい職場か、社外で見つけた転職先か、自分の起業なのか……。いずれにせよ新天地にたどり着いたなら、再び「守・破・離」を繰り返していけばいいのです。

今回は、新たな職場に順応するための「守・破・離」の使い方がテーマでしたが、新たなクライアントへの営業、新たなチームでのプロジェクトなど、これから皆さんが関わっていくひとつひとつの仕事の進め方にもこの「守・破・離」の考え方は応用できるはずです。ぜひ、実践してみてください。

来週は、「破」から「離」に進んでいくプロセスの中でもっとも必要とされる、リーダーシップの源泉について解説していきます。

●Profile

野田 稔 (Minoru NODA)

多摩大学経営情報学部教授/(株)リクルート フェロー。

1981年、野村総合研究所入社。同社にて組織人事分野を中心に多数のプロジェクトマネージャーを勤める。経営コンサルティング一部長を経て、現職。 また、(株)アミューズに所属し、テレビ・ラジオ出演、著作・講演活動等でも活躍中。著書に 『やる気を引き出す成果主義ムダに厳しい成果主義』(青春出版社)、『コミットメントを引き出すマネジメント―社員を本気にさせる7つの法則』(PHP研究所)など多数。多くの企業、組織から研修講師などを務め、年間平均200本ものセッションをこなす人気コンサルタント。日本全国を飛び回る日々は続く。

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