さて、あなたの今の仕事に「意義実感」を見つけることはできそうですか? それが見つかったなら、仕事を楽しむ達人への第二段階、「責任実感」の獲得に進みましょう。まず、どんな仕事であっても、すべてひとりで最初から最後まで完結できることなどありません。そういった意味では、社長も社員も一パーツと考えていい。自分に与えられた仕事のアウトプットが、全体にとってどのような反応や変化を生み出しているのか。そこをしっかり自己認知することが、「責任実感」を獲得するための近道です。
これは昔テレビで見たドキュメンタリー番組の話です。スペインのバルセロナに、アントニオ・ガウディが設計し、現在も建設工事が続けられている「サグラダ・ファミリア」という教会があります。ここで親子二代にわたってレンガ積みをしている職人がいました。テレビのレポーターが彼に聞きます。「なぜあなた方親子はこの仕事を続けているのですか?」。職人は自慢げに答えました。「私たちは世界遺産をつくる仕事をしているのです」と。確かに、レンガ積みの仕事をする人がいなければ、世界遺産「サグラダ・ファミリア」は完成しません。どのような仕事にも存在している「ある部分」は、全体にとって絶対に完結していなければならないものなのです。
本当にやらなくていい仕事なら、もちろんやめたほうがいい。それは、意義も責任も全くない活動ですから。ですが、今のあなたの仕事はどうでしょう。会社や職場全体に対してあなたが果たしている役割を今一度じっくり考えてみてください。「無意味だ」「納得いかない」と考えていた仕事でも、全体の中で捉えなおしてみると何らかの重要性が見えてくるのではないでしょうか。もしもあなたに与えられたその仕事が「それなり」の重要性なのであれば、あなたは会社や職場にとってまだ「それなり」の重要性しかないわけです。しかし、全体の中の「それなり」の仕事に「自分にはこの仕事の結果に個人的な責任がある」という素直な気持ちを持って、それを確実にこなすことが第一歩。これができて初めて、もう一段階上の仕事が見えてくるのだと思います。
そうやって今の仕事に「責任実感」を見いだせたなら、次に必要となるのが「成果実感」です。これは、「自分の仕事がうまくいっているかどうか自己判断できる」という実感を指します。その実感を持つためには、仕事の処理時間でも量でも質でもいい、自分自身でその仕事に対する目標を決めること。ここでも前回お話したセルフ・リーダーシップの概念が必要とされます。人から与えられた目標が「暗い目標」だとすると、自分で決めた目標は「明るい目標」といえるでしょう。その「明るい目標」のゴールを100ではなくて105くらい、少し厳し目に設定して極限まで頑張って達成する喜びを感じてほしい。それができれば、より高みを目指そうという成長欲求が生まれてきます。そして、自分を甘やかさないために、何を持って目標が達成できたとするのか紙に書いておく、もしくは口に出して周囲の仲間に伝えておくなどすると効果的です。
さて、2週にわたり、@意義実感(本連載第26 回参照)、A責任実感、B成果実感という、ハックマン&オールダムが提唱している「職務充実理論」を用いて仕事を楽しむ達人になるための解説をしてきました。この3つの実感を自分の仕事に取り入れることができたなら、あなたはもうセルフ・リーダーシップを持って「仕事を楽しむ達人」になれたといえるでしょう。きっと幸せなキャリアもあなたに寄り添ってきてくれるはずです。
ところで、どんなに優秀な仕事を楽しむ達人でも、落ち込むことはあります。そんなときに、彼らはどうやって自分のモチベーションを高めるのでしょうか。来週は、自分をやる気にさせる「スイッチ」のつくり方を解説していきます。

