「新しい会社に転職した」「社内で希望の部署に異動できた」「現在の仕事で悩んでいる」……。読者の皆さんが置かれている状況はさまざまでしょう。しかし誰もがきっと「できることなら、今の仕事を目一杯楽しみたい」と思っているはず。では、仕事を楽しむ達人になるために一番大切なものとは何でしょうか?
それは、セルフ・リーダーシップを持つことです。人にリーダーシップを発揮する前に、まず自分に対するリーダーシップを発揮することが重要だということ。自分が自分の仕事のリーダーであるという主体性を持つことこそが、目の前にある仕事を楽しむ最大のコツだと思うのです。なぜなら、他人にリーダーシップを渡した瞬間に、すべての仕事は「やらされ仕事」になってしまうから。まずはこの大前提を心にとめてください。
さて、今週から3回に渡って、ハックマン&オールダムが提唱している「職務充実理論」(本連載第9回参照)を用いながら、セルフ・リーダーシップを持って仕事を楽しむ達人になるための方法を解説していきます。
【復習】仕事に取り組む意欲を高める3つの心理的状態。
(1)意義実感→「自分は価値のある重要な仕事をしている」という実感
(2)責任実感→「自分にはこの仕事の結果に個人的な責任がある」という実感
(3)成果実感→「自分の仕事がうまくいっているかどうか自己判断できる」という実感
仕事を楽しむ達人になるための第一歩は、今の仕事に「意義実感」を見つけることです。どんな仕事であれ、意義を感じることができず、楽しくないと続けることが難しい。いかに自分で仕事に意義を見つけ、それを楽しめる状況をつくり出していけるかが重要になります。ではここで、セルフ・リーダーシップを持って、仕事への「意義実感」を見つけたMさんのケースを紹介しましょう。
ガソリンスタンドで働き始めたMさんは、「お客さんが来たら笑顔で走って接客に向かう」ことを入社初日から心がけていました。そのうち彼の接客態度が気に入った顧客が増え、Mさんが接客すると給油だけでなく、オイル交換など追加のオーダーもしてくれるように。
すると店長からその働きが認められ、Mさんの給料もアップ。これに気を良くしてもっと何かできないかと考えたMさんは、満タン給油してくれた顧客に自分でつくった「渋滞回避の裏道マップ」をプレゼントすることにしました。これがまた大評判で、顧客はさらに増加。そうやって彼は、ガソリンスタンドでの仕事をどんどん楽しいものに変えていったのです。
Mさんは、自分で決めた「笑顔で走って接客に向かう」ことで顧客数や売り上げ伸ばし、職場に貢献しているという最初の「意義実感」を得ることができました。仕事を楽しむ達人の多くは、このような小さな成功体験を必ずどこかで経験していると思います。ここで見逃してはいけないのが、この「意義実感」は人から与えられたものではなく、セルフ・プロデュースによって獲得したものであるという点です。
職人気質と呼ばれる人には、凝り性が多いですよね。なぜなら彼らは、凝ってみれば仕事が楽しくなることを知っているのです。そんな彼らは仕事というものを、自分の好奇心を満たすための遊びであるととらえているのかもしれません。仕事に限らず、スポーツでも何でも、うまくなればなるほど楽しみが増していきます。小さなことでもいい、自己満足感、達成感が得られるまで努力して、まずはひとつの仕事をうまくできるようになることが大切です。
だから、仕事を楽しめる達人になる第一歩は、「要素技術」にとことんこだわること。コピー取りでも、資料づくりでも、電話のアポ取りでもいい。自分なりに意義や目的を考え、自分なりの工夫をしてみる。「あいつはデキル」と評判の同僚や先輩たちの仕事を参考にしてもよいでしょう。繰り返しになりますが、大切なことは自分で工夫をすることです。そして、ひとつやってみて成功したらまたもうひとつやってみる。それがうまくいって周囲から認められると、さらなる成長欲求が生まれます。そういった好循環ができたら、しめたものです。
ぜひ、仕事に「意義実感」を見つけるために、「要素技術」へのこだわりをひとつずつ実践してみてください。この行動がきっと「やらされ仕事」からあなたを解き放ち、セルフ・リーダーシップを持って、仕事を楽しめる達人になるための近道を示してくれるでしょう。
来週は、自分の仕事に「責任実感」「成果実感」を持つための方法を解説していきます。

