イタリアには「プロジェッティスタ」と呼ばれる働き方があります。これは熟練工という意味でも使われる言葉だそうですが、僕はこの働き方が今後、日本でも増えてくるかもしれないと考えています。簡単に説明しておきましょう。
ある企業が新製品や新サービスの開発をする際、外部の開発専門家であるプロジェッティスタを起用し、製品開発プロジェクトにかかわる市場リサーチ、マーケティング、研究開発、生産、販売など、すべての仕事を統括させる権限を与える。つまり企業にとって外部に存在する、敏腕コンサルタントやプロジェクトマネージャーのような働き方の発展系をイメージするとわかりやすいかもしれません。
プロジェッティスタは、広告、アパレル、機械製造、土木建築などなど、多くの業界に存在しています。元々はさまざまな分野のプロとして活躍していた会社員が、起業・独立をしてプロジェッティスタになるケースが多いようです。ですから、アパレルデザインが専門のプロジェッティスタは当然、高いデザインの技能を持っていますが、それ以外にプロジェクト完遂のためのさまざまな専門知識や人的ネットワークを持っていなければなりません。だから彼らは、ひとつの技能を極めた人という意味を持つスペシャリストという呼ばれ方を嫌い、プロフェッショナルと呼ばれることを好みます。もちろん企業から自分が選ばれるための競争は非常に激しいですから、常に新しい知識を学び続ける必要がある。生き残ること自体、とても厳しい世界といえます。
そんな生存競争の厳しい働き方ですが、イタリア人は「仕事で刺激を受ける生き方」を好むのです。また、彼らは自分の人生は自分自身でコントロールすべきものだと強く考えています。そういった意味でもプロジェッティスタは、多くのイタリア人にとって憧れの存在といえるのではないでしょうか。なぜなら、いくらギャランティーが高くても、嫌いな会社の仕事は引き受けない。逆にギャランティーは低くても、意義のある仕事と思えるなら快く引き受ける。ここには完全な仕事選択の自由があります。完全に自分主導の働き方ではありますが、一方ではプロジェクト完遂に関する責任を全面的に背負う働き方でもあるわけです。もしかしたら、やらされ仕事が大嫌いなイタリア人の国民性、という側面から生まれた働き方かもしれませんが(笑)、ある面、とても自分自身に正直な働き方といえると思います。
ビジネス世界のスタンダードは目まぐるしく変わっています。それに伴い企業は、さまざまな案件に対してプロジェクトを組成して、スピーディーな対応をすることが求められます。それゆえ、外部の専門性だけでなく実行力も兼ね備えた人材が現実に必要とされているのです。イタリアのように「プロジェッティスタ募集」という求人広告が出るようになるには、まだ時間はかかるかもしれませんが、日本においてもプロジェッティスタが活躍する日は遠くないのではないでしょうか。
さて、ここでひとつ提案です。これまで僕は、この連載の中で「社外への転職を検討する前に、まずは社内転職をしてみよう」というメッセージをお伝えしてきました。そのひとつの形として、まずは今の会社で「社内プロジェッティスタ」となり、プロジェクトを起案し、実行してみてはいかがでしょうか。その先には社内でのキャリアアップもあるでしょうし、そのプロジェクト運営で培ったノウハウを強みにした転職も可能になります。
社内プロジェティティスタとなることで、さまざまな勉強をせざるをえない状況に自分を追い込めますし、他部署の人間とも知り合えますから社内に顔も広がるでしょう。そうやって自分で勉強し続け、ネットワークを構築しながらプロジェクトを推進することこそ、プロジェッティスタの働き方なのです。この活動を続ける中で、もしかしたら将来、プロジェッティスタとして起業するという選択も見えてくるかもしれません。
来週からは、「仕事を楽しむ達人」になるための方法を解説していきます。

