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“キャリア力”をつければ仕事はもっと楽しくなる!
「のだみ流・働(はた)(らく)論!」

第23回 「欧州流キャリア見聞録」(ドイツ編)

  • マイスター制度が有名なドイツは職人の国であり資格社会でもある。
  • キャリアの自己選択が早い段階で行なわれ、自己効力感が高い。
  • 我々が見習うべきは、自分の能力に対する意識の明確化。

ある機関からの依頼で、ドイツ、イタリア、ベルギーの3カ国を旅してきました。調査のテーマは「欧州のミドルマネジメント(中間社員)たちの労働実態」です。日本と同じく、欧州のミドルマネジメントたちも苦しみながらも前向きに働いているのだな、ということをこの旅を通して実感しました。今後ますます経済のグローバル化は進んでいきますので、世界各国の労働環境やキャリアに対する考え方を知っておいて損はないと思います。今週は少し視点を変えて、ドイツのお話をしていきましょう。

ドイツを代表する世界最大級の化学薬品会社を見学したときのことです。ある社員が胸に下げているIDカードを見せてもらうと、そこには「大学卒業・○○資格保有」と書かれてあります。マイスター制度が有名なドイツは職人の国といわれますが、資格社会という側面も強いのです。ちなみに、マイスターは2種類存在します。ひとつは「手工業マイスター」、もうひとつは「工業マイスター」。前者が世界に知られる「マイスター制度」のマイスターであり、その資格・地位は法律でしっかり守られています。後者は工場で監督者として働く専門訓練を受けた作業員で、手工業マイスターほどの社会的地位はないそうです。

しかし、私がインタビューした化学薬品会社に35年勤務している工場技術者Aさんは、将来の独立を視野に入れて、「手工業マイスター」の資格を取得していました。詳しい過程は端折りますが、Aさんの場合、15歳ですでにこの道に進むと決めて、20代前半には「手工業マイスター」の資格を取得。この会社に就職し、ヒューマンリソースマネジメントの研修を何度も受けながら、ピラミッドヒエラルキーの頂点を目指して出世してきました。Aさんは現在もビタミン工場で、プロセス改善マネジメント職に従事しています。

一般的にドイツでは、技術系職種に限らず、就業する前に学校や資格の取得など様々な制度的ハードルがあり、それを乗り越えないと希望の職業に就けません。しかし、視点を変えてみると、早い段階で将来のキャリアを自己選択できる風土であるという考え方もできます。一方、日本では技術系の学問を学んだ人が、営業職に就くことも少なくありません。出世にしても、本当に自分の実力で出世できたのかわからない。そういった意味で、キャリアアップ実現の際に無力感を覚えることが多いのではないでしょうか。しかし、資格社会であるドイツの場合は、キャリアアップ実現の自己効力感がとても高いのだと思います。

僕はドイツでの調査を進めるにつれ、ジョン・クランボルツ教授が提唱する「計画された偶発性」(“Planned Happenstance Theory”=キャリアの80%は予期しない偶然の出来事によって形成されている)は、この国ではなかなか理解されないだろうと思いました。(※「計画された偶発性」については第11回を参照)。

一長一短を論じるわけはないですが、日本とドイツ、どちらのほうが幸せなキャリア選択のスタイルといえるのでしょうか。いずれにしても、ドイツのような国家的制度は無くとも、自分の能力に対する意識を明確にし、それをもって将来のキャリアプランを組み立てていく。この点はぜひ参考にしておきたいものです。

来週は、イタリア、ベルギーの「ミドルマネジメント見聞録」をお届けします。

●Profile

野田 稔 (Minoru NODA)

多摩大学経営情報学部教授/(株)リクルート フェロー。

1981年、野村総合研究所入社。同社にて組織人事分野を中心に多数のプロジェクトマネージャーを勤める。経営コンサルティング一部長を経て、現職。 また、(株)アミューズに所属し、テレビ・ラジオ出演、著作・講演活動等でも活躍中。著書に 『やる気を引き出す成果主義ムダに厳しい成果主義』(青春出版社)、『コミットメントを引き出すマネジメント―社員を本気にさせる7つの法則』(PHP研究所)など多数。多くの企業、組織から研修講師などを務め、年間平均200本ものセッションをこなす人気コンサルタント。日本全国を飛び回る日々は続く。

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