ここまで、幸せなキャリアを導く「Can」「Must」「Will」のマネジメント手法を説明してきました。しかしキャリアデザイン以前に、私たちには解決しておくべき問題が存在しています。「そもそも私たちはなぜ働くのか?」。今回からこの根源的ともいえる疑問を紐解いていきましょう。
ちなみに、みなさまは「なぜ働くのですか?」という質問に対して、どのように答えるでしょうか?
近代に目を向けてみると、まず第二次世界大戦敗戦後の日本には国土復興という国民全員に突きつけられた大きな目標がありました。そして1960年、池田勇人内閣の下で国民所得倍増計画が策定されます。国民が一丸となって一所懸命働くことで、国民総生産を倍増する。そうやって自分たちの生活水準を上げ、素晴らしい世の中をつくろうというムーブメントです。「白黒テレビ」「洗濯機」「冷蔵庫」が三種の神器と呼ばれ、これらの家電を購入することが働くうえでの大きなモチベーションとなりました。
国から与えられる「豊かになろう!」という動機づけと時代背景のおかげで、国民の多くが、働くことへの疑問をさほど感じなかったのだと思います。そして正社員として働き始めれば、終身雇用という長期的安定が約束されていたわけです。僕はある面、この時代の会社員はとても幸せだったと思います。
そして現代、日本は世界第二位の経済大国に成長し、大いなる物質的豊かさを手に入れました。社会環境も様変わりし、日給1万円稼げるアルバイトがあったり、最悪の場合には国の生活保護制度も準備されている。人類史上稀にみる必死で働かなくても食べていける国の誕生です。そうなると、みんなお金や生活の安定のために働かなくてもいいんだと感じ始めます。その変化の中で「なぜ働くのか?」という根源的な疑問が生じてきたわけです。
そういった意味で、僕は昭和の頃と比べて今はとても大変な時代だと思います。働くという行為に対して、自らが新しいモチベーションを設定していかなければならないわけですから。
人生や社会と向き合い、その答えを探し出すのは簡単なことではありません。僕はこう思うのです。今の時代、「なぜ働くのか?」と悩むことは当たり前であると。だから、悩む自分を卑下しないでください。むしろ肯定していいのです。ここが幸せなキャリアと出合うためのスタートです。
地球上の生物の中で、人間だけが一生学び続けることができる動物であるといわれています。私たちは常に「成長し続けたいから働くのだ」と考えてみませんか。もうひとつ、人間は個体のままだとすぐに死んでしまう動物なのだそうです。社会というバックグラウンドがあって、私たちは初めて生き続けることができる。だから、私たちは常に「社会を維持するために働くのだ」と考えてみませんか。そのうえで、仕事を楽しめる自分をつくることができればいい。まずはそんな意識改革から始めてみましょう。
次回は、ハックマン&オルダムの「職務充実理論」とケーススタディを使って、より明確に「私たちはなぜ働くのか?」という疑問を解消していきます。

