前回は、「Will」「Must 」「Can」のマネジメントのお話をしました。そこで今回からは、そのプロセスについて解説していきたいと思います。まずは、幸せなキャリアを導くための「Can」の棚卸です。
現代ビジネスマンの多くが、自分自身の「できること=Can」を明確にできていないのではないでしょうか。例えば、「あなたは何ができますか?」という問いに対して、はっきり答えられる人は本当に少ない。財務部に所属しているので、財務はできます、とか……。今、実際に自分が所属している組織で要求されていることを自分の「できること」と答える確率が非常に高いのです。
逆にいうと、所属している組織からの要求によって、自分の「Can」が限定されている。つまり、これまでの職歴が自分の可能性を限定しているのです。これはある意味仕方ないことかもしれません。しかし、僕自身が考える本質的な「Can」とは、もっと奥深いところにあるものだと思っています。そこでぜひやっていただきたいのが、自分の可能性を広げるための「Can」の棚卸なのです。
まず最初に、自分史を作成してみましょう。記憶が残っている幼少期から始めて、現在までの自分史を書いてみるのです。これまでの自分と向き合いながら、「人前で話すことが得意だった」、「走ることが得意だった」など、得意だったことやワクワクした経験をいくつでも挙げてみてください。ここでの大切なポイントは、小学生や中学1年生くらいまでの自分に特に着目してみること。自分がもっている潜在能力は、意外とそのころに片鱗を見せているものです。
次は、見つかった「Can」を抽象化していきます。例えば、「人前で話すことが得意だった」という「Can」が見つかったとします。通常、得意であったことと自分が楽しいと感じていたことは一致していることが多いと思います。そして、その楽しいと思ったことの「いったい何が楽しかったのか」を抽象化して考えてみてください。
例1:人前で話すことが得意だった
⇒人から拍手されたり『話すのがうまいね』と褒められることが快感だった
⇒聞いている人に納得してもらえることが気持ちよかった
例2:料理が得意だった
⇒材料を組み合わせて新しい味をつくり出すことが快感だった。
⇒食べてもらった人に「おいしい」と言ってもらえることが気持ちよかった。
などです。ここで抽象化するというプロセスを省いて、「人前でしゃべることが得意だった」=「政治家に向く」などと安易に職業名に直結させてしまうと「Can」は広がっていきません。もっと「Can」の発想を楽しみ、自分を深掘りしてみるのです。
風を切って速く走るのが好きだったという人がいたとしましょう。それを抽象化して考えてみると、誰よりも先へ進んでいくという感覚が好きだという可能性があります。するとその感覚は、営業で数字を追いかけるという仕事につながるかもしれません。
このように昔の「Can」を抽象化していくことで、今の仕事にはあまり関係のない「Can」と出合える可能性は高いのです。「小学校、中学校時代に満面の笑みを浮かべたことってなんだろう?」。繰り返しになりますが、僕は特にここが大切だと思っています。
そうやって出合った「Can」の可能性を、忘れることなく持ち続けましょう。今すぐ実現できなくても、絶対にそのイメージを消去しないでください。大人はすぐにそれを消去してしまいますが、消去せずチャンスが来るまで置いておけばいいのです。
そして最後は「できる自分」をイメージし、信じきること。その「できる自分」の姿は決してひとつである必要はありません。たくさんの「できる自分」をまずはイメージしてみましょう。それが、あなたらしい働き方を見つける第一歩となります。
次週は、その自分らしい働き方に制限を加えている「Must」を縮小する方法を説明していきます。

